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2014年5月19日月曜日

小保方論文再論

この問題については、理論物理のように第一発見者としての名誉が最優先される分野と化学や生理学のように応用技術の開発と権利化が優先されるものとでは、発表の時期や表現方法がおのずと違ってくるという常識を持たない人は発言の資格がないと言っておきたい。

前者では、寸秒を競う先陣争いになり、一刻も早く追試による認知を得るために、最大限詳細なデータを公開するのが一般であるが、後者では、出願後15年で切れる独占使用権を長期に渡って保持するためにさまざまな工夫(特許戦略)が必要となる。例えば、優先権を確保するため他の研究者に先んじて基本特許(原理のみ)出願しておき、具体的応用例は、事業化の時期にあわせて小出しに出願して行くなどであり、再現実験が可能になるような詳細データはぎりぎりのタイミングまで出さないか、最後まで出さないことも珍しくない。

いずれにしても研究者の世界で認知されるまでには何年もかかるのが普通であり、最後まで無視されて終わることも少なくない。それは、誰も再現できなかった場合もあるし、誰も興味を示さず、従って再現実験をする者がいなかった場合もある。逆に、何十年か後にノーベル賞を受賞することも有るのだから、今回のように、研究活動の実態を知らない野次馬が恰も人民裁判で断罪しようとするのは、狂気の沙汰である。

学会誌に載る論文の90%以上は、研究者としての、知識とアリバイ(業績)を残すだけの価値しかないような内容で、本人と査読者(通常2人)にしか読まれずに終わるのが実態である。言うなれば、研究を業とする人達の業務報告若しくは学習報告であり、そういう論文ほど内容を棚上げして体裁や引用リストの数に拘る傾向がある。

本件に関しては、中部大学の武田邦彦教授が極めて妥当な解説をしています。
https://www.youtube.com/watch?v=YNsNNatMn6U

2 件のコメント:

  1. 税金を使ってやるのだから、納税者に説明する義務があるというのが、無知で無責任なメディアやそれに踊らされた野次馬ですが、税金に責任を負うのは、理研という組織であり、理研としてはきちんと特許を出願済みで優先権を確保する努力をしているのですから、非難される理由はありません。
    しかし、いまの日本は、マスコミの一党独裁下にありますから、野球には関係の無い事件を理由に甲子園に出られなくなる高校と同じで、研究の本質には関係の無い粗を探して居丈高に不遜な口を利く無礼な記者に対して、野依さんのような大学者が頭を下げさせられるのです。
    理研としては、研究者を守りたくても、税金に対する義務を追求する世間の風潮を無視できず、泣く々々小保方さんを切って、特許権を死守せざるを得なかったのでしょう。

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  2. 私は富士通時代に、金融システム部門の特許出願窓口もやりましたので、自分でも何件かの特許を持っていますし、大学では、院生に特許出願書の作成を義務付けていましたから、特許戦略については多少知識が有るつもりです。
    大きな予算を使う科学・技術の分野における学術論文は、いまや特許戦略の一駒でしかないというのが実態で、純粋理論の世界で金には無縁だと思われてきた数学の公式さえ特許として認定された例があるくらいです。
    小保方さんにデータの公開を迫る人々は、国家財産である理研の特許を公開し、公知の事実(public domain)にせよと言っているわけですから、小保方さんが応じられる筈がありません。彼らが何処かの国の工作員で無いとしたら一体何者なのでしょうか?

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